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はじまりの滝(秩父不動滝)

管理人が滝をめぐるようになったきっかけ。最初の滝について。

2007年某日、何かを求めてとにかく山の方へ車を走らせる。あの時は本能だったのか、山、そして水を求めていた。地図を見ながら、今までは入ろうとも思ったことのない山の中。脇に荒川を臨みながら奥へ進んでいく。特に目的も目標もなかった。ただ遠くへ行きたかった。色んなものを振り切りたかった。ふと、持っていた地図に「不動滝」の名前を見つける。「なんか滝があるらしいよ。」軽い気持ちだった。川沿いに、対向車がきたら、すれ違うのも大変な山道をゆるゆる進むと看板と東屋を見つけた。駐車場らしきものはないが、路肩に2台ほど車がとまっていたので合わせて車をとめる。車を降りて看板を見ると、ここからちょっと歩いたところに不動滝があるらしい。歩道に目をやるとまぁまぁ整備されている。さぁ行ってみようか。ほんの軽い気持ちだった。

吊橋

入口の吊り橋

川に向かって歩道はジグザグに下っている。サクサクと枯葉を踏みしめながら下りていくと、吊橋が現れた。わぁい吊橋だー!山歩きなんてほとんどしたことがなかったのでこれだけで嬉しくなれる。下に流れてる川は、先日の大雨のために水量が増しているようだった。この水の流れる音を聞いてるだけでも落ち着いた。この時は本当に水の流れを欲していたのだろう。
吊橋を渡り切ると、途端に人工的な道はなくなった。いきなりの山道。入口の整備っぷりはどこへ…?道は山の上へ続いている。結構急な山道。所々倒木もあり、跨いだり潜ったりしないと通れない。…こんな激しい道だったとは、入口の東屋からじゃ想像してなかった。ヒーコラ言いながら山を登る。15分ほど登ると、お堂が見えてきた。そうか、不動滝というだけあってお不動さんがいらっしゃるのかー。お不動さんはちょうど山道を登りきったところにいらっしゃり、なにやらさらに奥のほうから水音が聞こえてくる。こんどは下りの山道。水音の方目指して下っていくと、大きな滝が現れた!

秩父不動

不動の滝遠景

暗い森の谷間に、それは轟々と落ちていた。すごい!想像していたものと全然違う。神秘的で力強くて激しい。滝に近づくにつれ清らかな風と水しぶきが全身にかかる。私の心の中で何かが動いた気がした。とても清々しい気持ちになった。いつぶりだろう、こんな感覚は。どす黒いものに支配されていた私の心がちょっとだけ軽くなった気がした。どろどろと心の底に溜まっていたものがちょっとだけ流れたような気がした。ばらばらになっていたものが、ひとつになろうと望んだように思えた。暗い山の中、ひっそりと、けれど大胆に、昨日も今日も明日も変わりなく、落ち流れ続ける。滝。落ち口からは噴き出すようにしぶきをあげ、瞬時に岩に打ちつけられる水の流れ。轟音。なにもかもが素晴らしかった。心打つ感動に、しばしその場から離れられなかった。何かを求めて辿り着いた答えがこれだと思った。

秩父不動の滝

不動の滝正面から


この滝に出会ってから、私は滝を求めて旅をするようになった。決してこの滝は有名ではないし、数多くある滝の中では取り立てスケールが大きいわけでもない。でも、私はこの滝を一生忘れないだろう。後日、心理屋さんに話をすると、「面白い」と言われた。山は守りの象徴。山に囲まれるのは守りを求めているから。その中に絶えず流れる滝。これには必ず意味があるそうだ。う~ん、改めて滝に奥深さを感じた。