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早戸大滝(早戸大滝/大岩の滝/雷滝/三日月の滝)

以前から見たい行きたいと思っていた早戸大滝。一緒に行きませんか?と声を掛けて下さった方により、ついに実現する時がきた。なんでも早戸大滝は林道から約2時間。道なき道を渓流沿いに進んだ先にある秘瀑と言われる滝であることは滝の本で情報を得ていた。たいした経験もない私にとって、私一人で行くのは無理無理無理!と思っていたこの滝に、ついに向かう日が来たのである。数度の打ち合わせ(というか経験者の方からのアドバイス)により、初めて渓流シューズとナイロン手袋を購入、その他こまごましたものを用意して時を待った。
私は出発数日前から段々緊張してきた。早戸大滝までの道のりは険しいと聞くが、滝熟練の方からするとカンタンだというこのギャップ。私は今までこういった滝好きの人が集まって滝を目指すという会合に参加したことはない。きっと私は体力ないし鈍いしトロいし、大変な行程になるに違いない。くれぐれも迷惑を掛けたり、足手まといにならないようにしなければっ…と思えば思うほど緊張は強まっていった。
朝、日の出前に現地近くに集合。メンバーは5人。車でずんどこ林道を進み、山にはいる手前の広場で準備に入る。…装備からして皆さんとても慣れてそう…。気を引き締めて日の出とともにいざ出発!
さて、林道の脇からいきなり道じゃないような道に突入。私の事前情報によると確か最初はしばらく険しい登り。ってそのとおり。さっそく息があがるが、皆さんのペースに遅れちゃいけないと、と必死になって付いていく。ぜぇはぁ。登りを越えると廃墟になった山小屋が登場。山小屋に「←雷平」という看板が付いていた。その後はしばらく幅30cmくらいの山道をひたすら歩く。途中に板で渡しがあったりするがここは特に怖いとか思わなかった。道は次第に下りなり、渓流が見えてきた。

橋を直す勇者たち

橋を直す勇者たち

最初の休憩をそこでしましょう、と渓流の目の前へ進む。激しい流れ、そして水没している足場…。え、足場流されてるんですけど…。そもそも心許ない足場なんですけど…。ここで足場を直す勇者が登場。ロープで引っ張り橋を石に渡す。と同時に、「ここから渓流シューズです」と言われ、川の前でぴかぴかの渓流シューズに初めて履き替え!私もついに渓流デビューだぁ。そこで2,3渓流シューズでの注意とアドバイスを教えてもらう。ここから先はずっと渓流沿いを歩くので渓流シューズを履きっぱなし。土の上も岩場も水の中もこの靴で進むとのこと。まさか履きっぱなしだとは思っていなかったのでびっくり。そうか、それで皆さん水陸両用(?)ぽい靴なんだな、と納得。休憩も終わり、皆さんがスタスタと足場を進む中、おっかなびっくりフラフラと足場を渡るわたし。びびり過ぎのへっぴり腰でした。そこからは渓流沿いに主に岩場を歩く。途中岩場での歩き方とか教えてもらいながら(本当に勉強になります!)2つめの渡渉場に到着。ここの橋は流されてない…がやっぱり細くて滑りそうで怖いぞ…と思っていたら、「せっかくだから渓流を歩いてみたら?何事も体験だし」と言われ、「はいっ」と私は勢いよく川に突っ込んだ。初めての川は水が冷たくて流れが早くて足を取られそうになり、バランスを崩した。と、同時にリュックの脇に差していた水筒がリュックから飛び出した!皆さんが「わーっ!」と叫んだと同時に、一人の勇者が即座に反応して流されていく水筒をキャッチ!と同時に水に入ってしまった!「わー!すいませんすいません!ごめんなさい!」その御方はせっかく水にぬれない装備をしていたのにこのダイブで水に浸かってしまった…。命がけ(?)のダイブ、本当にありがとうございました。そして本当に申し訳ない…。

橋を直す勇者たち

勇者によって直された橋

ここから先は10cmもない岩壁をカニ歩きしたり岩を登ったり降りたり、数回の渡渉を繰り返した。皆さん経験者の方なのであっちだーこっちだーと素早い判断で道中を歩く。私は付いていくので精一杯。岩場で次に足をどこに置いたらいいのかわからない時も、「次はこっち」と教えてもらいながらなんとか進めた。歩いていてわかったのだが、私の装備、ストックが足らなかった…。皆さんストックを片手にスイスイ進む。私は手ぶらだったので安定が悪い悪い。渡渉の時に「安定感が違うから」と、ストックを何度かお借りしたが、確かにストックがあると、川の流れに足を取られる危険も少なくなるし、底の見えない川の深さがストックによってわかって、次に足を乗せるべきところがわかる。ストックすごい便利だー。また一つ勉強になった。

滝目前の岩場

滝目前の岩場

途中休憩を挟みながら川沿いをひたすら進むと、突然「あれです」と言われた。指差す方向には木の根が張った岩場。そしてそのてっぺんの向こうにチラリと見える水しぶき…「あれが早戸ですかー!?」「ここを越えれば滝です」わー!ついにここまで来た!ここを越えれば…!そういえば滝の手前にきつい登りがあるという話だったっけ。ここを登るのか。よし!登る!早く滝を見たくて、この岩登りはたいして怖くなかった。むしろ面白かった。登りきると、目の前に早戸大滝が!ドーン!でもここからの角度だと、早戸大滝が岩に隠れて前景が見えない。まぁこの岩に隠れた姿がまた早戸大滝の特徴でもあるんだけど。ということでそこからさらに滝つぼへ降りる。滝つぼへ落ちる美しい清流。見上げるほど大きな滝の目の前まで来た。そこからは各自思い思いの場所から滝を堪能。ここまで出発から2時間15分ほど経っていた。

岩場を登りきって見える全景

岩場を登りきって見える全景

岩壁と岩壁の間をぬうように落ちる早戸大滝は、見る角度によって流れが見えなかったりする。私はなんとか全景の見える場所まで登って滝を見た。これが、早戸大滝。激しく水を岩壁に打ちつけながら猛々しい姿を誇示するように落ちる水。しかし一旦岩壁にぶつかった水は今度は清らかに滝つぼへと降り注ぐ。打ちつけられた部分の岩は青みがかってより清涼感を強く出していた。内側の岩の色が青いところに長い年月をかけて水が岩を削り、青い色がむき出しになったのだろうか。それとも、水の色に岩が染まったのだろうか。素人の私にはわからないが、薄い翡翠色の岩が美しかった。滝からは冷たい風が吹き降ろし、周りの木々の木の葉がざっ…と舞う。そうだ、今は紅葉の季節なのだ。赤や橙色に染まった葉が、青白い滝と美しいコントラストを描いてすばらしい景色を生み出していた。残念ながら私の安いカメラではこの風景を撮ることができない。私は何度も何度もその一帯の景色を脳裏に焼き付けた。滝から吹く冷たい風が身体を冷やし始めた頃、全員で記念写真を撮り、早戸大滝の鑑賞は終わった。

親子滝

大岩の滝

さて、次なる行程は、川の分岐する場所(雷平)まで戻って、早戸大滝は向かって左手に進んだが、今度は右の分岐を進んでその先にある雷滝を目指すことに。え?分岐なんてあったっけ?と、行きに皆さんについて行くことに夢中になっていた私はわからなかった…。ので、また皆さんについて行くことにする。途中、渓流釣りをしている若者数人と出会う。話しかけるとイワナなどが釣れるということ。釣りをしにこの(私にとって)険しい行程を進んでくるとはなんと元気な若者なんだ。と感心しつつ、雷平に到着(私はこの時点でもどこが雷平なのかよくわかってなかったが)。雷滝はここから30分ほどで着くとのこと。また、枯葉を踏みしめ、岩を登り、渓流を渡渉する。分岐箇所からしばらく20分ほど進むと、「あれが大岩の滝です」と言われ、見ると確かに大きな岩があるね。ここが大岩の滝という名前がついている滝らしい。渓流を分断するように大きな岩が川の真ん中に鎮座していた。形は渓流瀑になるのかな?はっきりどこからどこまでが滝になるのかわからなかったが、ここで休憩をとることにする。大岩の滝については名前も存在も知らなかったので、あとで調べることにしよう。と頭の中にメモ。

雷滝

雷滝

休憩後、10分ほど奥に進むと、ほぼ垂直の岩場にロープが垂れ下がっていた。そこをうんしょ、と登ると、雷滝が現れた!でかい!思っていたよりも大きい!見事な滝だった。幅が広くて、岩壁を細かく跳ね回りながら水が落ちている。そんなに近くに寄らなくても飛んでくる水飛沫。早戸大滝を目的に来たのにこんなおまけというのもおこがましい滝が拝めるとは!一通り写真を撮り終えると私は滝の前に座り込んで滝を眺めた。滝が心の中に入ってきて、私の心を洗い流す。私の滝に来る理由をまた感じた。この感覚があるから、私は滝に来るのだ。しばらくトリップしていたようで、「…ノエさん、ヒノエさん、戻るよ」という声で目が覚めた。かなり滝と一体化してしまっていたらしい。


足場を直していた作業員の方々

足場を直していた作業員の方々

ここから後はひたすら来た道を戻るのみ。渡渉もだいぶ慣れてきて、ジャブジャブ水の中を躊躇せずに進めるようになってきた。しかしさすがに疲れもでききたのか、ときどき踏ん張りがきかなくなってよろけたりすることも。でも、もう一度通った道だし、行きよりはだいぶ精神的には楽だった。そして帰り道の衝撃。なんと、行きに流されていて勇者が直した橋が、さらに補強されてガッチリと組んであったのだ。そして橋の横には今削りましたっって感じの木屑の山…。すごいー!直ってるー!今度はさして恐怖も感じずに橋を渡る。ここで渡渉は終了。休憩をはさみ、登山シューズに履き替える。さて、あとは山道を戻るだけだ。と進むと、山道の渡し板を今まさに補強修理中の方たちに出くわす。この方たちが順番に足場を直していたらしい。こういう方々がいるから私たちは安全に歩けるのだな、としみじみ感じ、感謝の言葉を述べて、先に進ませていただいた。山の中を進み、廃墟の山小屋の横をとおり、行きには激しい登りだったところを今度は下り、車の止めてある林道までひたすら歩いた。林道到着13:20分。滝鑑賞時間も含めておよそ7時間の道のりだった。この後、林道から見えるという三日月の滝に案内してもらい、この日は解散となった。
お誘いしてくださった方、同行してくださった方の協力とアドバイス、そしてやさしく頼りになるサポートのおかげでこんな私でも無事早戸大滝に行くことができました。感謝しても感謝しきれません。ここで今一度御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました!